国内生産量の90%を占める栃木のかんぴょう
栃木県下野(しもつけ)市。代々、干瓢(かんぴょう)や落花生の加工を手掛けている古池商店がある。
干瓢は国内生産量の90%が栃木県。県では特産品として推奨され、毎年干瓢祭が開催されている。古池商店のある石橋地区では、干瓢の更なる品質向上を目指し、生産農家と干瓢問屋の有志が力を合わせ、新たな生産体制を築くことに取り組んでいる。古池商店もその一つ。古池商店は干瓢を農家から直接買い受け、選別加工する第一問屋なのだ。
干瓢は「ふくべ」とも呼ばれる夕顔の実を薄く長く剥いて干したものだが、1個6~8kgもある実1個につき150~200gの原料しかとれない。
7月のふくべの実りの時期ともなると、農家の方々を大変な重労働が待ち受けている。
まず、早朝3時に起きてふくべの採取。早朝の新鮮な実でないと、硬くなってきちんと剥けないからだ。また、干し上がった時に裾が縮れてしまう原因にもなる。
4時頃から7時ぐらいまでの間にふくべを剥いていくが、この作業は長年の経験を要し、誰にでも出来るものではない。厚さを一定に保ちながら、芯の部分までは剥かないよう2メートル以上ずつ剥いていく。 これらが出来ないと干瓢の質は格段に落ちる。
7時過ぎ頃、剥きあがった干瓢をハウス内で干す。質の良い、腐らない干瓢を仕上げるためには真夏に長時間干し、十分に乾燥させる。真夏でも気温が低かったり、湿度が高い場合はハウス内を暖房で温める。
干瓢は甘く虫が好むため、虫除けのためハウス内に干しているが、その他にも土やゴミ等の汚れ、少しでも水に濡れると商品にならない非常にデリケートな作物なのだ。
干しあがりの状態をみて、夜7時ぐらいまでに干瓢を取り込む。
減少傾向にあるかんぴょう生産を守る取り組み
殆ど手作業で神経を集中させるかんぴょう作りは、栃木県でも年々生産農家が減ってきている。 そこで、ハードスケジュールに加え技術も要する干瓢の生産を何とか改善し、国産干瓢の生産を守ることを目的として、石橋地区の生産農家及び干瓢問屋の有志が協力しあい、「石橋干瓢生産振興会」を立ち上げた。
振興会では、農家から早朝採取したふくべを問屋で買い受けた後、振興会で雇った専門の人に早朝、干瓢を剥いてもらう。また、別の人にハウスでそれらを干し、乾燥する作業をしてもらう。干しあがった干瓢を硫黄で蒸した後、振興会の干瓢問屋で分ける。
ハウスや、硫黄で蒸す設備は振興会が出資したものだ。
古池商店では、干瓢に付着している不純物を取り除きながら、1本ずつ等級別けする。(等級には、特等、一等、二等、ツルがある)それらをそれぞれの用途に従いカットした後、袋に詰める。
このように干瓢の生産を分業化することで作業を軽減し、新たな生産体制を築こうとしている。 「まだほんの一部の量しかこの流れで行っていません。しかし振興会の生産量は毎年増加しているので、更なる努力で国産干瓢の生産を守っていきたい。」とは、古池さんの言葉だ。
食物繊維・ミネラル かんぴょうの見直すべき栄養価
日本食物繊維成分表によると、干瓢は食物繊維が豊富なことで知られるゴボウが100g当たり8.5gなのに比べ、3~4倍の30.1gの食物繊維を持つ。その量は切り干し大根よりも多い。
また、カルシウム、カリウム、リン、鉄といったミネラルも、ゴボウを始めとする栄養素豊富な野菜(ブロッコリー、ほうれん草、春菊、人参、大根)と比べ群を抜いた値を持つ。
ほうれん草と比べると、カルシウムはの約4~5倍近く、無漂白の干瓢となるとそれ以上だ。鉄分は1.5倍。
リンはブロッコリーよりも多く含み、カリウムも他の野菜と比べ群を抜いている。
ヘルシーな食材が注目されている昨今、その主役ともいえる食材は干瓢だったのだ。 便秘がちな方、妊婦の方やお年寄りの方はもちろん、現代の食卓に積極的に取り入れたい栄養価を持っている。
干瓢は巻き寿司で食べることはよく知られているが、サラダや和え物、煮物、漬物といった様々な惣菜、またメインとしても活躍する食材だ。 この機会に、栄養素豊富な干瓢の使い方を覚えていただきたい。(「まめ知識」参照)
一般的に干瓢は、変色やカビ、虫の発生をふせぐために二酸化硫黄で燻された(漂白された)色の白い干瓢と、極少数生産の無漂白(無添加)干瓢とがある。
栃木産干瓢の90%は漂白済みのものだが、二酸化硫黄は大変水に溶けやすいので、調理前の水洗いやボイルすることで溶けて流れるので害はない。柔らかいながらコシと弾力を持ち、煮付けても溶けたりはしない。かんぴょう巻き、昆布巻き、おでん、その他煮物に適している。
無漂白の干瓢は、下処理が簡単で手軽に使える。干瓢本来の甘みが味わえるので味噌汁、お吸い物の具や卵とじ、酢の物などに適している。
現代の食卓では、決して馴染みが深いとはいえない食材だが、干瓢の豊富な栄養素は注目すべきところである。上手に活用して、毎日の健康に役立てていただきたい。
かんぴょうの豆知識
かんぴょうの下処理
栃木産普通かんぴょう
さっと水洗いした後に、塩(小さじ1)を加え、柔らかくなるまでもみます。(まな板を利用して洗濯の要領でもむと簡単です。)塩を洗い流して水気を絞り、たっぷりの熱湯で好みの柔らかさに茹でます。茹でた後は、硫黄の溶けた茹で汁を流すために、さっと水洗いして下さい。
無添加かんぴょう
さっと水洗いし、たっぷりの水に10分ぐらい浸し戻します。浸した後はお好みの調理法でご使用下さい。(塩もみ不要)
※赤くなったかんぴょうもよく水洗いをすると元の白さに戻り、ご使用になれます。
かんぴょうの栄養価
エネルギー 261kcal/カルシウム 250mg(漂白)375mg(無漂白)/カリウム 1,800mg/鉄 2.9mg/リン 140mg
【出典:五訂食品成分表】
古池商店のかんぴょう
商品一覧
栃木産かんぴょう
栃木産はコシと弾力が自慢
硫黄でいぶして漂白したかんぴょう。二酸化硫黄は水に溶けやすいため、調理前の水洗いやボイルした時に溶け出すので、味付け前の茹で汁さえ捨てれば害はありません。
栃木産かんぴょう 300g | ¥2,000 |
栃木産かんぴょう 100g | ¥700 |
栃木産無漂白無添加かんぴょう
生産が希少な無漂白です
無添加だからかんぴょう本来の甘味がします。味噌汁やお吸い物、卵とじ、酢の物などに使うのがおすすめです。
栃木産無漂白無添加かんぴょう 300g | ¥2,600 |
栃木産無漂白無添加かんぴょう 100g | ¥900 |
古池家直伝!かんぴょうレシピ
かんぴょう料理の中で一番美味しいかも!?というお味噌汁。そしてボリュームたっぷりなのにヘルシーなパスタまで!かんぴょうレシピをご紹介。
かんぴょうの卵とじ味噌汁
- 無添加かんぴょう 適量
- 卵 1~2個
- 味噌
- だし汁(市販のだしの素でもOK)
- あさつき(ネギのみじん切りでもOK)
- 無添加干瓢を軽く水洗いし15分くらい水でもどす。干瓢が戻ったら水を切り、2㎝ぐらいにカットする。
- 鍋に入れただし汁を沸騰させ、干瓢を入れる。3~7分くらい煮て、お好みの固さになったら、火を弱め味噌を入れ溶かす。
- 卵をよく溶いたものを、味噌汁をゆっくりかき混ぜながら少量ずつ入れ、卵がふわっと浮いてきたら出来上がり!お椀によそったら、あさつきを乗せ、さあ召し上がれ(^^)
無漂白干瓢は簡単に調理でき、冷蔵庫で保管すれば1年は日持ちします。お野菜並みの手軽さを兼ね備えながら、長期間腐ることもない、まさにエコでヘルシーな食材!
かんぴょう DE カルボナーラ
- 国産干瓢100g
- バター オリーブオイル(サラダ油でもOK)
- ニンニクのみじん切り 鷹の爪(砕いたもの)
- ベーコン5~7枚(細かく切る)
- 牛乳400ml 小麦粉(小さじ2くらい)
- 塩、胡椒 パルメザンチーズ(お好みで)
- 卵黄1個 パセリ(お好みで)
- 普通干瓢を水で軽く洗い流した後、たっぷりの水に15分以上浸して戻す。20㎝ぐらいに長さを揃えて切る。切った干瓢をたっぷりの水で茹でる。沸騰後3分ぐらいで干瓢の茹で加減を確かめ、ちょっと堅めぐらいで火を止める。お湯を切って軽く水洗いをした後、よく水気を絞って切る。
- 熱したフライパンにバターとオリーブオイルを入れ、そこに鷹の爪、ニンニクを投入し軽く炒めたら、ベーコンを投入。ベーコンに軽く焼き色がついてきたら牛乳を投入!沸騰したら火を弱め小麦粉を少量ずつ(ダマにならないように)とろみを確かめながら入れる。火を強火にし、小麦粉を溶かすようにヘラで素早くまぜる。
- 2の中にかんぴょうを入れ炒め、塩コショウをしさらに炒める。最後にパルメザンチーズ、卵黄のといたものを入れ、手早く混ぜ合わせたら出来上がり!お好みでパセリの刻んだものを乗せても綺麗ですよ。
茹でて戻した干瓢は水を切ったら、冷凍保存できます。茹でておけばどんな料理にでも直ぐ使えるからお手軽度アップ!!